コンテンツにスキップ

金曜日の文具(第31回/八文字屋オリジナルノーブルノート「初雪」ができるまで)

LIFE×八文字屋のオリジナルノーブルノート「初雪」。

おかげさまで、店頭、通販、イベント、いずれでも色々な方に手にとってお買い求めいただいております!

ありがとうございます!!


ライフの製本工場に

発売前の去る晩秋、「LIFE(ライフ)」さまのご好意で、ノートの製造現場に立ち会わせていただきました。 

一般的なノートは、用紙の背をのりだけで接着する「無線綴じ」という方法で製本されていますが、ノーブルートは「糸綴じ分け折り製本」。

25枚の用紙4束を糸で縫ったうえに、綴じ部分をクロステープで補強します。

丈夫で、用紙が100枚でもバラけない、昔ながらの製法で、丁寧な手作業だからこそ仕上げられるものです。

「4冊合本」などとよく言われている、あの特徴的な厚みのあるノートが、いったいどうやって作られているのか。今日はそれを見せていただきます。


案内と解説をおもにしていただく長山さん(左)と山田さん(右)。

もうひとり、熟練の言わば親方的存在である倉田さん(残念ながら不在)との3人体制でノートを手がけられています。


断裁

ノーブルノートの本文用紙は、原料を厳選して抄造(紙料をすいて紙を製造すること)したオリジナル紙「Lライティングペーパー」。

素材感のある風あい、なめらかな書き心地、インクによるにじみや裏抜けの少なさが特長の高級筆記用紙です。

「初雪」で採用した「ホワイト」用紙は、インクのグラデーションを際立たせてシャープな発色をするように仕上げられています。

下が、印刷会社より、どさっと届いた「刷本」と言われるもの。ノートの素です。

最初はこの状態。表紙裏表紙2面、本文紙8面分。

印刷された大きな用紙を、ノートのサイズごとに断裁機でまとめてカットしていきます。


計数(員数)

長山さんの後ろでは、山田さんが次の工程に入っています。

断裁した本文紙の束を員数機という機械にセットし、25枚ごとに緑の仕切りを挟み込んでいきます。

この25枚区切りがノートのひと束になります。


丁合

表紙・裏表紙を25枚ごとに挟み込んでいく作業。

本文13枚、表紙、本文25枚、表紙、本文25枚(以下同)……本文12枚、と重ねていき、同じように、本文13枚、裏表紙、本文25枚、裏表紙、本文25枚(以下同)……本文12枚、と重ねていきます。

「本文13枚・表紙・本文12枚」と「本文13枚・裏表紙・本文12枚」の束を複数つくって、この2束がノート一冊分になるのですが、私は説明されてもピンとこず。

同席していた管理部の横山さん、営業部の小野さんも交じり、代わる代わる説明していただく事態になるも、私の理解力の低さもあいまってその場は混迷を極めました……。

表紙を挟んだ本文の束と、裏表紙を挟んだ本文の束は、マーカーの色で識別します。


ミシン綴じ

表紙・裏表紙と本文を、厚手のテントなど縫う(!)工業用ミシンで綴じます。

これはまさに職人技といった感じで、紙束の中央部分をダダダダダと次々にミシンがけ。

この段階では、まだ左右にページが分かれていない状態なのですが、このステッチのラインが、後の工程でページの分かれ目(折れ目)になります。 

この作業は現在、山田さんが一手に担っており、丸一日これにかかりきりのときもあるとのこと。

ミシンもこの作業用に色々とカスタマイズされているそう。というかテーピングがすごいです……。


折り

ミシンがけした用紙の束を、表紙が表にくるように折り返します。

この折機はここの設備の中でももっとも年季が入ってる機械で、見た目からして貫禄がちがいます(作動音も一番自己主張が強かったです……)。

 

真ん中(縫った部分)からしっかりとふたつに折り曲げていきます。

この工程を経ると、かなりノートっぽい形に。

完成形が少し見えてきました。


プレス〜寝かせ

ミシン綴じした背をプレスして平らにします。

上・プレス前、下・プレス後。

丁合の工程でお見せしたマーカー。

さらに、積み上げたノートに重石を乗せ、ひと晩寝かせます。

「じゃあ今日はもう終わりにしてこれから一杯どうですか?」というわけにもいかないので、料理番組のように事前に用意していたものが出てきました(ご配慮ありがとうございます……!)。


のりづけ〜はがし

のりをつけ、薄紙を貼り、背を補強します。

完全に乾いたら、この背固めされた積みノートを、一冊になる2束4山(100枚)ずつ、包丁で切り離していきます。

山田さんから「やってみますか?」という突然のフリ。

元来、この種のことはとみにポンコツなのでまったくきれいに切れません。

「これも納品しますね〜」というひやっとするお声がかかったので、もし背のクロスの下が妙にボコボコするなというものに当たったら私の仕業です(買いとります、ご連絡ください)。


クロス貼り

綴じた部分(ノートの背)に、クロス(黒い紙テープ)を貼りつけていきます。

ノーブルノートで使われているクロスは「雲形」という丈夫で高級感のある模様のもの。

のり(ローラーで循環している白巻きの部分)をクロスに塗布。

中央、帯状にのびているものがクロスで、それに挟み込まれているものがノートです(わかりにくい写真ですみません)。

ノートが機械で流されていくことで、それに貼りつけられたクロスも引っ張られて次々と繰り出されていきます。

二冊単位でこのように上がってきます。


仕上げ断裁

最後にふたたび断裁機にかけ、ノートの形に仕上げます。

二等分して一冊に切り分け。

背以外の3辺(天・地・小口)を断ち(三方断裁)、整えれば完成です!



美しい背の仕上がり。クロスにひび割れや歪みが起こらないように、数回に分けてていねいに断裁しています。


見学を終えて

長山さんによると、上の工程の三方断裁を「化粧をとる」とも言うそうです。

そこから「ノートの各部の名前って人の体と関係しているものが多いんですよね、"喉"とか小"口"とか"背"とか」なんて話に広がったことが印象に残っています。

それは、人のぬくもりが感じられる古きよき手仕事を、昔ながらの町工場(こうば)の延長線上のような現場で目の当たりにしたからかもしれません。

大がかりなオートメーション設備も大規模な生産ラインもありませんが、確かな技術を持つ"人"と機械の協働作業によって、一冊一冊ノーブルノートが作られています。

また「実際のところ、自分たちは機械の奴隷なんです」とも冗談まじりにおっしゃっていました。「機械さま、どうかご機嫌よく動いてください」とお願いしながら仕事をしていると。

そんな話をうかがうと、使い込まれた機械の表情にもどこか人間味が感じられてきます。

この場所で、心を込めて仕上げられたノーブルノート「初雪」は、八文字屋店頭、OnlineStoreで販売中です!(山田さんから「いろいろつくってきましたが、これはかっこよくてテンション上がりました」とのお言葉も頂戴しました!)

 

NOBLE NOTE 初雪

¥1,100


おまけ〜建物外観

東京の下町にたたずむとある流通センター。

今年、本社事務所を移転したことで、製本、物流、倉庫、事務機能が集約。

あのライフのすべてがここに……!

おなじみのロゴマーク! よく目にするのはモノカラーですが、赤と青のビビッドなツートンで高揚しました。

(文・写真 ナガオカ)

前の記事 金曜日の文具(第33回/武田健の『はじめてのガラスペン』)